見えない恐怖

俺の家ではビーグル犬を飼っているんだが、時々人間にはわからない理由で吠え始めることがある。大きな物音がしたとか誰か来たとか他所の犬が吠えているのに反応したとかそういう理由が見当たらないのに外に向かって吠えるのをやめないときがある。今日もそれで落ち着かせようとしてもまるで効き目無し。
一体全体何を感じてあんなに吠えるのかと思うんだが、実を言うと俺は犬がああやって人間に分からぬ理由で吠えるのが怖い。
以前に読んだ本で、「犬にしかその姿が見えない」怪物というのを見たことがある。人間の視覚では全く捕らえられないというのに、確かに存在している証拠には犬だけにはその姿が見えるらしくそいつに向かって吠え立てるのをやめないのだ。どこに居るのかわからないのはもちろん、その正体がどんな姿形なのか分からないというのが異様に怖かった。犬の反応が異常なのが余計に恐怖をそそる。俺はそれ以来、犬がどこかに向かって吠えるのが嫌で嫌で堪らない。俺の目に見えないだけで、得体の知れない化物が目の前にいるかもしれないと思うとちと耐えるのは無理だわ。とんでもないものを想像しちまいそうで、それだけで怖いよ。
そういや、考えてみると俺は「姿の見えない存在」はどれもこれも根本的に嫌いだな。ほんで思い出したことがひとつ。・・・できれば忘れていたかったけどな。
そう、思い出したよ。かの「透明人間」を読んだのは忘れもしない小五のときで、当時は各クラスに小さな本棚が据え付けてあって20だか30だかの本が並べられていた。そのなかに子供向けに翻訳されたのが入っていた、んだと思う。学校の図書館で借りたとかじゃないのは確実だ。あのころはピーターラビットの絵本とかタイトル忘れたけど宇宙船に乗って運び屋を営む一家の話とかに夢中になってたんだよな。だから図書館ではなかった。
まず「透明人間」という言葉に惹かれた。だって『透明』な『人間』だろ。どんなものかまるで想像がつかなかった。この言葉を翻訳に使った人は本当に偉いと思う。
ま、それでだ。あまり細かく思い出したくないんで詳細はすっ飛ばすが、俺がこのとき以後「姿の見えない怪物」全般が大嫌いになったのは確実。今もって駄目。
で、なんでいきなりこんな話をしたかと言うと、RPGamerのキャッスル・ファルケンシュタイン シナリオ・フックに目を通したから。誰かマスターやってくれんもんかねえ。