対盗賊

盗賊と対決する体制側のほうは何をどうしていたか。
実は地方の治安維持は完全に自己責任で、中央から軍隊がわざわざ派遣されてくることはまずなかったと言ってもいいだろう。叛乱でも起きれば話は別だが。それに中国では昔から強力な軍隊は中央にのみ留めて置いた。黎明期にさんざ苦労したせいだろうな。
地方の主要都市(これを府と呼ぶ)には常備軍が配置されていたものの、広い範囲を十分にカバーできるものではなく、これもあくまで非常の備えであってほいほいと出動したりはしなかった。
では今で言うところの警察みたいな役割は誰が担当していたのか。答えは昨日書いた「閑民」。畑仕事にあぶれてぶらぶらしてる連中を「放っておいたら何するかわからん」と体制側が取り込んで警察のような役割をさせていた。水滸伝で出てくる十把一絡げの捕り手とかはこれに当たる。もとはゴロツキだからやることもたかが知れていて、ひどいのになると盗賊が荒らした土地を後からやってきたこいつらがさらに荒らし回ったなんてこともあった。あげくの果てに適当に農民を捕まえて首を斬り、盗賊を捕まえたと報告することもあったとか。
これでは地方の農民は踏んだり蹴ったりだ。役人からは搾取され盗賊には襲われ軍人にはさらに酷い目に合わされたんではどうにも救いがない。
ところが。
意外なところに救いの手はある。それはかの「盗賊」たちだ。
つづく。多分次は夜。