おすすめ武侠小説・つづき

文中で挙げられてるものから選べばやっぱ『多情剣客無情剣』がいいかなあ。すんなり手に入るし時代設定がいつという厳密な描写がない。そういうのを気にしないで読める。それにやっぱ戦闘シーンが良いよ。脳内で楽に絵に変換できる。そして最高にハードボイルドに格好いい主人公・李尋歓。彼は名門の出で本人も科挙試験の第三席「探花」をとなったほどのエリートであり、江湖にその名を轟かせた武術の達人でもある。なのに名誉も何もかも捨て去り、今では不健康そうな青白い顔でなんかヤバめに咳き込むくたびれた男に成り果てた。その男が江湖を揺るがす陰謀と欲望の渦に巻き込まれていく・・・って話。
いやもうね、李尋歓がイイんだわ。報われぬ愛をひとり黙って耐え抜くし苦しみ咳き込む姿もくらくらするし。そして未だ一点の翳りもないその武芸。かつて江湖に謳われた「小李飛刀に仕損じなし」の言葉には一片の嘘も誇張もないのだ。もう最高。ぶっちゃけマジで抱かれてもイイ。ともかく、話の展開にも驚かされっぱなし(いい意味でも悪い意味でも、ではあるけど)であるし、脇役も含めた登場人物たちの持つ感情も実に個性的で良い。それゆえに始めて読む人には反発を覚えさせるかもしれないが。しかし断言しよう。そういうのをまとめて吹っ飛ばすほどの傑作であると。
まあ語りだすときりがないがこのへんで。是非一度読んでみてほしい。
つづく。