もうひとつの科挙

ルールブックにも記載があったので本日のネタは『武』科挙について。
実は科挙という制度は二種類あった。学問をはかるための『文』科挙と武芸をはかるための『武』科挙の2つ。しかしその比重は比べるのも馬鹿らしいほど文科挙のほうが重視され、単に「科挙」といえばすなわち文科挙のほうを指した。試験の合格者の待遇も天地ほどの差があり、文科挙の合格者には合格者というだけで名声が生まれ、なかでもトップの3名にはすぐに若手エリート官僚の道が拓けたというのに、武科挙の合格者はその肩書きを重んじられることすらほとんど無かった。まあ、ぶっちゃけ試験でいくら良い点をとっても戦争の役には立たないと思われていたというわけ。
制度としては文科挙と全く同じ道筋を辿っていく。科挙のそれぞれの試験の段階のアタマに武の一文字を足せばOK。合格者の呼び名も同じようにすれば問題ない。
試験の内容としては、騎射・歩射・技勇・地球があった。技勇は開弓(強い弓を満月のように引かせる試験)・舞刀(青竜刀を地面に着けずに扱う試験)・掇石(重い石を持ち上げる試験)の三科に分かれる。地球は高いところに置かれた球を弓で射落とす試験で要するに弓の腕前の正確さを試された。先へ進むと学科試験もあるにはあるが、武経を暗記させてそのなかから百字程度を清書させるだけという簡単なもの。しかも合否は実技のほうで既に決まっているからカンニングも黙認されていた。ところがどっこいカンニングしてまともな答案が書けるのはまだマシなほうで、ひどいのになると「一旦」という2文字を「亘」と書いたり、「丕」という文字を「不一」と別々の文字にしてしまったとかなんとか。カンニングで丸写ししてもこのザマじゃ合格なんかするわきゃないと思うかもしれないが、試験官のほうもどうせ軍人なぞに志願する馬鹿じゃこの程度だろうと見逃したらしい。これじゃ合格者が尊敬されないのは当然だよな。
『扶桑』のルールブックにもある通り、武科挙出身の軍人は冷遇され続けたのであった。ゲーム中に出てきてもせいぜいどっかの田舎の部隊長止まりだろ。

参考文献:科挙―中国の試験地獄 (中公文庫BIBLIO)