ゴールまで
まあかくの如く試験が積み重なるわけで、しかもそれぞれの試験は複数回あり、試験会場に入ったら終了するまではひとりひとり独房に入れられて外部との接触は一切禁止された。これは試験官のほうも同じで、要するに不正を防ぐ仕組みであった。
一度の試験は複数日にも渡る。たとえば郷試は8月9日から16日まで一週間に渡って行われる。この間試験会場は門を封印し壁も蟻の這い出る隙間もないほどだ。あまりに厳重なものだから急な死人でも出たら始末に困ることになる。普通の方法では外へ運び出すのが不可能なので死体をこもで包んで塀の上から外へ放り投げたらしい。ひでえ。
さて、科挙の最終段階である殿試は試験官が天子そのひとになる。受験する側の挙人の扱いもそれまでとがらりと変わり、天子の客という扱いになる。それまで自腹だった昼の弁当も出してもらえる身分になる(笑)。この最後の試験は天子が厳しい試験を勝ち抜いてきた英才たちに「朕は幸い、こうしてそなたらに尋ねる機会を得たので問うが、次の問題に対してどう思うか。誰にも憚ることなく思ったことを記せ。さもなくば朕の志に叛くぞ」と出題され、答えるほうも「わたくしめから申し上げますが、臣の聞きますところによれば・・・」とかいう形で答えることになる。この殿試を突破した者が進士と呼ばれ、これでゴールとあいなるわけだ。
つづく。