煮酒論剣

ふたつ名

『水滸伝の世界 (ちくま文庫)』を買ってきた。 では早速だがこれの第17章「豪傑たちのアダ名」から。 梁山泊の英雄好漢たちは皆個性的でカッコイイ「ふたつ名」を持っている。このイカス伝統は武侠小説にもしっかりと受け継がれているので、主要なキャラには…

科挙あれこれ

どうにもネタにしたい本が見つからん。もういいや今日ジュンク堂で買って帰ろう。それまでのつなぎにあれこれ。 ●試験会場で起こる事変 前にも書いたが科挙の試験会場は試験が終わるまでは完全に出入りが禁じられる。つまり一種独立した異世界になるというこ…

落第生の悲劇

真面目ぶった話が終わったので与太話のお時間です。なんせキツい試験制度だったから落第にまつわる話は山のようにある(笑)。 唐の時代の諺に既に、 五十少進士 五十歳で進士になるのは若いほう なんて言われていたのだ。勉学を志す紅顔の美少年も落第を続け…

まとめ

『科挙―中国の試験地獄 (中公新書 (15))』にも述べられている通り、科挙はどう考えても無茶な制度であり、弊害も多かった。そもそも科挙の試験範囲はほとんど四書五経の古典の丸暗記でそれを学問と呼べるかって問題もある。 思うに、科挙制度の最大の効果は…

殿試

この殿試は宋の時代になってから設けられたもので実は単に最終試験としてではなく、もっと重要な別の役割があった。科挙はその男の一生を左右するものだから、合格させてくれた試験官に特別の恩を感じるようになる。ここに私的な関係が生まれ、やがては親分…

ゴールまで

まあかくの如く試験が積み重なるわけで、しかもそれぞれの試験は複数回あり、試験会場に入ったら終了するまではひとりひとり独房に入れられて外部との接触は一切禁止された。これは試験官のほうも同じで、要するに不正を防ぐ仕組みであった。 一度の試験は複…

科挙のしくみ

文章だけで説明しようとするのは難しすぎるので、まずは図でご覧あれ。 進士になるまでの流れ 童生:ヒラ受験生。 県試、府試、院試、歳試を受験して次へ。 ↓ └── 学校試 ──┘ ↓ 生員:予備試験合格者。国立大学の生徒。 科試を受験して次へ。ここからが本番…

受験戦争

いつの時代であろうと試験ってな学生にとっちゃつらい試練だよなァ。 ということで、『科挙』と武侠小説の関わりについて。え? と思われるかもしれないがこの科挙という制度は古くは隋の時代から延々とつい100年前まで存在した制度であり、これを無視して中…

老師!!

武侠小説で師匠といえば、これはもう仙人みたいな老人と相場が決まっている。 具体的に何歳かという描写は無いが、髪も髭も真っ白で枯れ枝のように細くどう見ても力なんかあるようには見えないのにいざ戦うとオニのように強い。文字通り指先ひとつでダウンさ…

「師匠ォー!!」「こォの馬鹿弟子がァー!!」

どかーん、ばこーん、ずばごごごご(SE)。 さて、まずは基礎知識。武侠小説では師匠のことは基本的に「師父」と呼ぶ。師が女性でも。その配偶者は女性ならば師娘(しじょう)で男性ならば師公(しこう)。自分より兄弟子は上から大師兄(だいしけい)、二師兄、三師…

坊主と武侠

昨日は道教だったんで今日は仏教と武侠との関わり。 インド原産の仏教は中国のお国柄と深く結びついて独自の風格を備えている。もともとインテリの宗教である仏教がより学問的な気配が濃くなっているように思う。知識人としてのイメージがあるんだよな。だか…

道士・道姑と武侠 つづき

あとでとか書いといて日付が変わってるやんけー。まいいや。 前述した通り道士には知者としての側面もあったわけだが同時にかなりウサン臭い存在でもあった。というのも、(これは坊主もおなじだが)他所で何かまずいことをしでかした人間が変装するのに頻繁に…

道士・道姑と武侠

道教と武侠の関わりに関して。 まず、何よりも道教は不老不死への願望がその根底にある。これのわかりやすいモチーフが仙人。仙人についての文献を年代順に調べていくと、始めは山の神・惠みを与えてくれる神等の存在であったものが、やがて人間が修行その他…

本の著者によっても変わる。

昨日、剣のことに少し触れたんで本日は『武芸十八般』について。これはつまり、武人が修めるべき武術の総称。「武芸十八般に通じる」と言えば普通は常人以上の達人を指すが、武侠世界では最低合格ラインであってその上がゴロゴロいる(笑)。 この18種類は時代…

剣についての小ネタ

先日、わざわざコメントを頂いたRagna-Rockさん(id:Ragna-Rock)の日記を拝見していたら、GFコンに見事当選されたとのこと。おめでとうございます。 俺も2度ほど申し込んでみましたが落選。やはり競争率は高い模様。それで、『謎の美少女剣仙』なるものをネタ…

「俠」とは?

昨日人と話してて「おや?」と思ったんだが。もしかして勘違いしてる奴って多いのか? 侠客とはヤクザのことではない。 なぜか変換で『俠』の文字が出ないんだが。普通に変換しても『侠』になる。もちろん字としては『俠』が正しい。だが面倒なので今までも『…

扶桑国はどこでしょう?

A:「扶桑国」でググれば分かります。 あっ、石を投げないでっ。 ・ ・ ・ ・ ・ さて、本格的な論考や論争は専門家の方々に任せてちょっとした雑談程度のことは俺でも分かるのでそのへんを少し。なお、例によって俺の記憶だけを頼りにしてるので間違ってても…

ネタ

見出しもそれっぽいものにしてみる。漢字4文字並ぶと偉そうで良い。 昨日は雨ってこともあったので寄り道せずにまっすぐ帰宅。思ったより時間ができたので文庫版の水滸伝に久しぶりに目を通す。 それで思いついたのでネタをひとつ。この手の話は大嫌いな人も…